Culture NIPPON シンポジウム

Culture NIPPONシンポジウム in 富山

文化プログラム×北陸ブランド、多様な日本文化を世界へ。

文化庁beyond2020文化オリンピアード

レポート

日本の文化や伝統を世界に発信。その新しい一歩を富山から。

日本の文化や伝統を世界に発信。その新しい一歩を富山から。

パネルディスカッション出演者

  • 秋元 雄史
    • モデレーター
    秋元 雄史

    東京藝術大学大学美術館 館長

    1955年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部絵画科卒業後、1991年よりベネッセアートサイト直島のアートプロジェクトに関わる。2007年~17年金沢21世紀美術館館長。15年から東京藝術大学大学美術館館長・教授。16年から女子美術大学芸術学部特別招聘教員。
    Photo:疋田 千里

  • 十一代 大樋 長左衛門(年雄)
    • パネリスト
    十一代 大樋 長左衛門(年雄)

    美術家

    1958年、石川県生まれ。2016年十一代大樋長左衛門襲名。文化庁長官アドバイザリーメンバー。ロチェスター工科大学、金沢大学などの客員教授、東京藝術大学講師。大樋焼の伝統を継承しながら、現代アーティストとしても活躍。その活動は国内外で多岐にわたる。

  • 増田 セバスチャン
    • パネリスト
    増田 セバスチャン

    アーティスト・アートディレクター

    1970年、千葉県生まれ。平成29年度文化庁文化交流使。京都造形芸術大学客員教授。原宿のKawaii文化をコンテクストに作品を制作。代表作に、原宿「6%DOKIDOKI」「KAWAII MONSTER CAFE」プロデュースなど。2020年に向けたアートプロジェクト「TIME AFTER TIME CAPSULE」を世界10都市で開催中。

  • 林口 砂里
    • パネリスト
    林口 砂里

    アートプロデューサー

    1968年、富山県生まれ。エピファニーワークス代表取締役。現代美術、音楽、デザイン、仏教、科学など幅広い分野をつなげるプロジェクトの企画/プロデュースを手掛ける。2012年より拠点を地元高岡市に移し、東京と富山の二地域居住を続けながら、地域振興プロジェクトにも取り組む。

  • 中川 翔子
    • パネリスト
    中川 翔子

    歌手・タレント・女優

    1985年生まれ。2002年芸能界デビュー。2020年東京オリンピック・パラリンピックの「マスコット審査会」メンバー。現在、NHKドラマ「植木等とのぼせもん」に出演中。歌手、声優、タレント、女優など幅広い分野で活躍している。

パフォーマンス
パフォーマンス可西舞踊研究所
富山県高岡市
富山に伝わる三つの民謡「おわら・こきりこ・むぎや」
富山県の伝統的な民謡、越中おわら、こきりこ節、むぎや節を現代的感覚のモダンダンスで表現した作品は、岩河三郎作詞作曲の交響合唱組曲で構成された曲で踊る、可西舞踊研究所オリジナルな作品。

レポート

  • Culture NIPPON シンポジウム in 富山
  • Culture NIPPON シンポジウム in 富山
  • Culture NIPPON シンポジウム in 富山
2017年10月29日(日)
Culture NIPPON シンポジウム in 富山
文化プログラム×北陸ブランド、多様な日本文化を世界へ。

秋元雄史2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、日本各地の多様な文化を掘り起し、世界に発信する機運を高めるためのシンポジウムが富山で開催された。

パネリストは、林口砂里氏(アートプロデューサー)、十一代大樋長左衛門氏(美術家)、増田セバスチャン氏(アーティスト・アートディレクター)、中川翔子氏(歌手・タレント・女優)という多彩な顔触れで、それぞれの立場から日本の文化を掘り起し、生み出し、発信する活動を精力的に展開している。それぞれに独自性あふれるパネリストであるが、あえて分類するならば、前者二名は、伝統文化に軸足を置きつつ他分野との融合に挑戦し、文化の新たな可能性を開いている。北陸出身で、北陸を拠点に全国や世界にも活躍の場を広げている点も共通している。後者二名は、アニメ、マンガ、ファッション等日本のポップカルチャーを世界に発信し、海外で多大な影響力を誇るおふたりである。

モデレーターの秋元雄史氏(東京藝術大学美術館館長)は、この一見全く違うベクトルを持っているように見える伝統文化と21世紀の新しい文化を、「日本が独自に生み出し世界に認められているもの」という共通項で捉え、両者をつなぐ幅広い議論を展開した。

伝統文化とポップカルチャーの共通点?

十一代大樋長左衛門中川翔子中川氏は、伝統工芸とポップカルチャーについて、「両者は遠いようでいて、イマジネーションから発信される素晴らしさという点は共通している」と指摘。これまでも仏教、科学、アートなどジャンルを超えて様々なものをつなぎ合わせてきた林口氏は、伝統芸能と新しい文化の共通点をベースに両者がもっとコラボレーションしていくことで様々な可能性が開けるという考えを述べた。中川氏からも、例えば伝統工芸職人を目指すアニメキャラクターを作るなど、時代に合わせたコラボレーションを試みることで、若い人達が「面白そう」と興味を持つような間口を広げることが重要ではないかという指摘がなされた。

増田氏は、自分の作品に日本の伝統をどう落とし込むかをいつも考えているという。ポップカルチャーも日本の土壌からそのDNAを反映した最新のものが生まれるのであり、両者はかなり密接につながっていると言えるのかもしれない。

また、大樋氏は、例えば茶道文化は最終的には庶民のものとなったが、長年の伝統の中で凝り固まってきてしまった部分があると指摘し、上から与えられるのではなく下から盛り上がってくるサブカルチャーのように、伝統文化もみなが楽しく共有できるものにしていかないといけないと述べた。変わってはいけない「本質」を見極めながら革新を続けることが、伝統工芸が未来に生き続ける鍵となってくるだろう。

現代のポップカルチャーもいつかは伝統に。アーカイブの重要性

増田セバスチャンパネリストからはアーカイブの重要性についても話が及んだ。

現在文化庁文化交流使としてオランダに滞在している増田氏によれば、オランダでは博物館が100年後のことを考えてコレクションしており、エヴァンゲリオンのおもちゃも収蔵庫に入れているということである。つまり、いつかアニメやポップカルチャーが伝統になる可能性があり、100年先を見据えて、オランダでは今の時代の文化もアーカイブすることを徹底しているのである。日本が生み出したものを大切にするためにも、日本でも現在進行形の文化のアーカイブを充実させるべきという主張には、中川氏も強く同意した。中川氏は海外で評価されているにもかかわらず日本内部で気づかれず重要視されていない、魅力ある文化がたくさんあると指摘。また、そのような新しいカルチャーを現在作り続けているクリエイター達が元気で活躍できるよう、今の社会においてきちんと評価される仕組みを構築すべきであるということを強調した。

地域の文化をいかに発見し発信するか?

林口砂里北陸には独自の多様な文化がある。これから各地の多様性ある文化の掘り起しと発信は重要性を増すと考えられるが、それはいかにして可能なのか。富山を拠点に活動する林口氏は、謙虚な県民性も手伝ってか富山県民は身近にある地域資源を当たり前のものと思ってしまい、何も特徴的なものはないと思いがちであると指摘する。しかし近年では、伝統産業の危機感から結束が生まれ、クラフトツーリズム等様々な興味深い取り組みも生まれてきているという。若い人達が伝統を受け継ぎながら時代にあったチャレンジをしている事例には、明るい兆しがうかがえる。

増田氏は、これまで文化といえば東京一極集中で、地方の人が地元の文化に誇りを持てない状況がある中、地域の人が魅力を自覚して発信するためには、地元以外の人達とも関わり、外の視点も加えることで広がる可能性があるという。昨年まで手掛けていた「かわいいね!金沢」プロジェクトでは、地元の伝統工芸職人と共に加賀友禅などの金沢独自の伝統工芸品に新たな視点を加えることで発信することを行った。伝統工芸士の技術を新たな可能性につなげ発揮する場となり、さらには海外に展開する話も進んでいるという。

また、北陸全体で地域の枠を広げて一丸となることや、様々な分野の人々が参画し一緒に何か手掛け、海外にも発信するプロジェクトをやってみたいという力強い決意やアイディアも飛び出した。

増田氏、中川氏は、富山といえば「ドラえもん」と口をそろえる。藤子不二雄ファンにとっては聖地であり、伝統工芸、地域文化、食文化、豊かな自然景観といった文化的魅力の宝庫である富山。様々な視点から地域の魅力を見つめなおし発信すること、そのための仕組みを整えていくこと、また分野を超えた人々が参画・連携していくことの重要性等があらためて確認されたシンポジウムとなった。

朝倉 由希
文化庁地域文化創生本部 総括・政策研究グループ
研究官

Culture NIPPON シンポジウム in 富山

beyond2020

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